貧乏神は満たされない。

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僕は今、会社にいる。 毎日毎日、四角部屋には問題が運びこまれる。 僕は、あれこれ部下に指示を出して会社の舵をきる。 そう、僕は社長だ。 僕はケーキ屋さんになったのだ。 母のケーキが大好きで、自分も職人となりケーキ屋さんになったのだ。 僕の作り出すケーキは大好評で売上も良い。 しかし会社が大きくなればなるほど不安や、悩みも増えていく。 僕はどうしたら良いのだ。 悩みは尽きないけど幸せな毎日だ。 僕は最近結婚した。 ワラシさんに良く似た子だ。 今、赤ちゃんを身体に宿している。 もう予定日は過ぎているのに、まだ生まれてこないから最近イライラしているようだ。 少しの刺激で感情が乱され泣いたり笑ったり忙しい。 僕はぼんやりと窓の外を見た。 歩いている人たちはどこに向かっているのだろう。 みんな、何を考えているのか。 スマホの着信だ。 「陣痛始まったみたい。」 僕は、仕事を部下に任せて自宅に戻った。 苦しむ妻に何をしたら良いかわからず呆然とする僕に母が的確なアドバイスをしていく。 僕はあれこれと用意をし入院準備を整えていく。 やがて陣痛の間隔が短くなった妻をタクシーで病院に運ぶ。 僕はソワソワとしていた。 10時間後、僕はウトウトしていたとき、妻から生まれそうだと連絡が入った。 急いで病院に行き、立ち会った僕の前にかわいい赤ちゃんが出てきてくれた。 僕は、嬉しかった。 やっぱり、普通の生活ってすごい。 幸せだ。 もう貧乏神はこないだろう。 僕は家族のために掃除をする。
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