貧乏神は満たされない。

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大黒屋は混んでいた。 連休初日は異常に混んでいて道に30組くらいの行列が出来ていた。 僕たちは、並んだ。ワラシさんは、パンを買いに行ったり、あちこちの店からおいしいものを買ってきた。 1時間くらいでようやく店内に入った。 予め何を食べたいかを聞かれてお会計も済んでいたから、僕らは入店してすぐにそばが食べれた。 大黒屋のそばは、出汁のよい香りに勝つほどのそばの香りが鼻をくすぐる。 僕は一気に食べてしまった。 「ところで、弘樹さんはどの人。」 厨房を指さして真っ赤な顔になったワラシさんは、可愛かった。もともと美人な人が可愛い仕草をするとこちらも幸せになる。 僕らは店を出た。 「何でワラシさんは、弘樹さんが好きなの?」 「あの子、江戸の頃からずっと料理人なの。あの子が作り出す料理は、最高でいつの時代の人も幸せにするのよ。だから私はあの子にお金を使う。」 ワラシさんは、何年生きているのだろうか。 聞いてよいかどうか悩みどころだ。 僕らはそれから焼き鳥、天ぷら、おでんなど商店街のあらゆるグルメを楽しんだ。 ワラシさんは、おいしそうに食べお金を落とし、お金を落とされた店は繁盛していく。 僕は改めてワラシさんの凄さを実感した。 ワラシさんは、ケーキ屋さんを出たら急に話しかけてきた。 「さ、あんたのうちにいくよ。」 僕は、ワラシさんと一緒に家に帰ることになった。
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