空也の異変とサイボーグ桜子

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「とにかく、今は営業中なんだから帰れよ!」 そう叫んだ空也に、怯えていたマキちゃんもハッと我に返って 「そうよ! 大体、明日の休みに来る予定だったっでしょう!」 と加勢した。 すると桜子さんは小さく笑って 「そこのアホが、穢れを吸いまくって妖刀の色がくすんでいるって聞いたから、繰り上げて来てやったんじゃない」 そう言うと、『パチン』と指を鳴らした。 鳴らした指の音と共に、サングラスに黒服の屈強そうな男達が現れ 「大変申し訳ございません。お店を緊急貸切にさせて頂きますので、お引き取り頂けますでしょうか?もちろん、お代はこちらで全額お支払いさせて頂きます」 と、店内のお客さんに丁寧にお詫びとお願いをして、桜子さんがお店に来て15分で、店内は俺達と桜子さんだけになった。 (ちなみに黒服の男達は、最後のお客さんと一緒に外へと出て行った) 店内に人が居なくなったのを確認すると、店内奥にある壁に沿って作られたソファーにドカっと座り、スラリと伸びた美しい手足を組んで 「さて、説明してもらいましょうか?」 と言い放った。 「ちょっと桜子!勝手にお店を貸切にされたら困るんだけど!」 そう反論したマキちゃんをギロリと睨むと 「オーナーには許可をもらってきたわよ。まず、新人くんの事から聞きましょうか?」 マキちゃんと空也を睨んでそう言ったので 「あの! 俺、失業して、アパートも立ち退きになって、途方に暮れていた所を助けてもらったんです。だから、3人を責めないでください!」 失礼かとは思ったけど、桜子さんの前に行って頭を下げた。 すると桜子さんが俺の顔をジッと見た後、突然、自分の頬を両手で叩き 「ダメ! ちょっと可愛いが過ぎない? こんな奴等の為に、頭を下げちゃうとか」 そうブツブツと呟き出した。 そしてハッとした顔をすると 「そっか……連れて帰れば良いんじゃない?」 と言い出すと、席を立ち上がって頭を下げる俺の肩に手を置くと 「じゃあ、別にこの店じゃなくても良いのよね?」 なんて言い出した。 「え?」 驚いて顔を上げると、美女と目が合う。 すると美女はヨロヨロっと数歩後退り 「ヤバい……。なに? あの可愛い顔。え?天使?天使が舞い降りたの?ってことは、ここは天国?」 とブツブツ言っている。 「あの?」 俺が小首を傾げて美女の顔を見ると、物凄い速さで空也に近き 「ヤバい、ヤバい、ヤバい! 理性ぶっ飛ぶ5秒前! なに? あの犯罪的は可愛らしさ! あのベビーフェイスであの身体の薄さ見た? シャツの肩の部分が肩から落ちてるんだけど! なに? ここで私に彼を襲わせて、私を犯罪者にするつもり? ちょっと、マジで発狂するレベルで好みのタイプなんだけど!」 怒涛の勢いで空也に呟いている。 マキちゃんはこっそりと俺に近付き 「ね、言った通りでしょう? あんたの体質もそうなんだけど、あんたってうちの一族の好みのタイプなのよ」 そう耳打ちして来た。 凄くありがたい事ではあるが、自分のコンプレックスを好きだと羅列されるのは複雑な心境だ。
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