空也の異変とサイボーグ桜子

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 俺が苦笑いしていると、桜子さんは空也の胸ぐらを掴んだまま 「まだ、あんたの番になった訳じゃないのよね?」 そう言うと、深呼吸してから俺の前に来て 「私のお婿さんに来て下さい!」 と、手を出されて言われてしまった。 (えぇ!初対面で逆プロポーズ!) 驚いている俺に、いつの間にか背後に来ていた空也が俺の身体を抱き寄せ、桜子さんの手を叩き落とすと 「断る! こいつは俺の番だ!」 そう叫んだのだ。 (えぇ! 番ってなに? 何なの? この展開!) 戸惑う俺を他所に 「ちょっと! 空也には言って無いわよ!」 「はぁ? 俺の番にちょっかい出すな!って言ってるんだよ!」 「まだ番になってないんでしょう! だったら、私にもワンチャンあるんじゃない?」 「はぁ? ねぇよ!」 と、二人がまた言い争いを始めた。 何なんだ? この人達は。 俺の意思は関係無いのか? そう思っていると 「こいつは俺の番なんだ! 俺以外となんてあり得ない!」 そう叫んだ空也に 「空也! それを決めるのは彼でしょう!」 と、ようやく俺の意思が必要とされる時が来てホッとした。 俺が遠慮がちに右手を挙げて 「あの……あなたのような綺麗な人にそう言ってもらえるのは嬉しいですが、まだ今日出会ったばかりですし……」 と呟くと、桜子さんは俺に視線を向けて 「わかりました。確かにそうですね。私は大丈夫でも、あなたは色々と心配ですよね。では、私の釣書を持参します」 と言うと 「そうと決まったら、時間が勿体無いわ。明日、又来るから」 俺以外の3人にそう言ってから、俺の手を握り締めると 「では、明日」 と言い残し、嵐のように去って行った。 突然の出来事に呆然としていると 「ちょっと! 青ちゃんどうするつもり?!」 と、マキちゃんが顔を近付けて叫んだ。 マキちゃんの顔圧に思わずのけ反りながら 「何が?」 と答えると 「明日の事よ! 桜子のヤツ、マジで釣書を持って来るわよ!」 そう叫んだ。 「釣書?」 聞き馴染みの無い言葉に首を傾げた俺に 「あんた、釣書を知らないの? お見合いとかで、結婚相手に渡す自分の身上書よ!」 そう答えたマキさんの言葉に 「へぇ〜」 と頷いた後、目が点になった。 「えぇ!」 驚いて叫んだ俺に 「だから言ったじゃない。あんた、五道家の血筋に好かれるのよ」 溜め息混じりに言われて、俺は空也と姫華ちゃんの顔を見ると 「空也や姫華ちゃんは、五道家じゃないんだろう?」 と言うと、マキちゃんは「あ!」と呟いてから 「そっか!青ちゃん、私達の事を何も知らないのよね。ごめんなさい。あんた、すぐにこの環境に馴染んで、前から一緒に居るような顔しているからさ〜」 なんて言いながら、おばさんみたいに口元に左手を当てて、右手を招き猫の手みたいに上下に動かしている。 「どうせ明日、桜子が来たら全部バレちゃうんだし、その前に私達の事や本業の話をしておくわね」 と言って、姫華ちゃんにお茶の用意をお願いすると、俺達は近くのテーブルに腰掛けた。
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