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五道家
「まずは……何から話そうかしら」
マキちゃんは口元に人差し指を当てると、小首を傾げて少し考え込んでいる。
すると俺の後ろに立っている空也が
「マキ。そういう仕草は、コイツみたいな女顔のヤツにしか似合わない。お前がやると、キモいだけだ」
と、辛辣な一言を浴びせている。
「空也……お前、もう少し言い方ってものがあるだろう?」
そう呟いた俺の言葉に
「お前だって、マキのちゃんとした姿を見たら、絶対に今の姿を止めさせたくなるぞ」
と呟いた。
「マキちゃんの、ちゃんとした姿?」
俺が首を傾げると
「マキちゃん、本家に行く時は男性の姿で行くのよ。黒いスーツをビシっと着て、凄くかっこいいんだよ」
お茶を出しながら姫華ちゃんはそう言うと、当然のように俺の隣に座った。
「マキちゃんが……男性の姿?」
俺の目の前に座っているマキちゃんは、厳つい短髪でメイクをしている。
飲食業なので派手なメイクはしてはいないが、服装はいつも女性物の和服に割烹着を着ている。
お店が休みの日になると、紫の派手なメイクをして、ピチピチの身体のラインが出る原色のワンピースを着ているのだ。
「へぇ……」
俺が興味を示すと
「止めて!あれは仮の姿なんだから!」
そう言いながら、頭を抱えている。
「じゃあ、マキちゃんはいつから女装を始めたの?」
頭を抱えるマキちゃんに質問すると、マキちゃんは小さく笑って
「空也と姫華のご両親を、亡くしてからよ」
そう答えた。
「そうね……。色々話す前に、まずは五道家とアタシ達の能力について説明するわね」
と言うと
「この世はね、陰と陽で出来ているの。まぁ、簡単に言うと、+と-ね。光があれば影があるように……」
そう言うと、紙に陰陽師と書くと
「日本古来から、様々な災いから人々を守ってきた陰陽師も、陰と陽と書くでしょう? 陰と陽は、必ず一対でなければならないの。どちらか片方だけ……というのは、不完全な形になってしまう訳。でも、五道家には陰の気質を持つ者が多く産まれ、陽の気質を持つ者が中々産まれなかった。だから、陽の気質を持った人を外から妻として一族に向かい入れていたのよ」
と説明した。
「ねぇ、その陰の気質が持つ力と、陽の持つ力ってどんな感じなの?」
「陰の気質は、災いを切り封印出来る力。陽の気質は、災いを昇華させ幸運へと導く力なのよ。空也は陰の気質だから、災いを切った時に穢れを浴びてしまっても、それを昇華させる事が出来ないの。だから……」
「あぁ!それでタマが墨色になって、空也は体調が悪そうだったのか!」
俺がそう叫ぶと、マキちゃんは苦笑いをして頷いた。
「ちなみに、それぞれ穢れの払い方っていうのがあってね。アタシは能力がそんなに強くないから、人が幸せそうにしていると、その幸せなオーラで浄化出来ちゃう程度なのね。でも、空也の場合は能力が強くてね。どんなに強い呪いや生霊さえも、払う事が出来る。だけどその分、穢れが強いから自分では払えない訳。それで、今まではSEXして吐き出していたのよね」
「えぇ!それって、相手は大丈夫なの?」
思わず仰け反りそうになって叫ぶと
「もちろん、生ではしないわよ!そんな事したら、相手に穢れが移っちゃうからね」
マキちゃんが真剣に話しているから聞いているけど、物凄い内容を聞かされているような気がする。
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