71人が本棚に入れています
本棚に追加
『チリーン』
街を歩いていると澄んだ鈴の音が聞こえて、思わず足を止めた。
音のした方へと視線を向けると、シルバーホワイトの長毛猫が『とん』っと軽やかに現れた。
サファイアのような美しい瞳が、俺をジッと見つめている。
(うわ~!綺麗な猫だなぁ~)
思わずうっとりと見つめながら
(名前はあれかな?マカロンとかクイニーアマンとか、そんなお洒落系の名前だな)
そう考えていると、猫が『ケッ』って顔をした。
「え?……」
驚いて猫を見ると、最初に見た時と同じ顔で俺の顔をジッと見つめている。
(気のせいかな?)
首を傾げながら、美しい猫に思わず見蕩れていた。
辺りに誰も居ないのを素早く確認して
「美猫さんですね~」
って、高い声で思わず話しかけてしまう。
そっと近付き、そのフワフワの毛並みを撫でながら
(この手触り……最高!絶対、ドラ○もんに出てくるス○夫のママとか、テレビや映画に出てくる両手にジャラジャラ指輪をはめた『ザマス』言葉のおばさんが飼ってそう~)
なんて考えていると、「ブフっ」と吹き出す声が聞こえた。
驚いて振り向いた俺は、いつの間にか背後に立っていた男に声を失う。
身長178cmはありそうなスラリと細身で、ボサボサの漆黒の髪の毛。
健康的に少し日に焼けた肌と、前髪で覆われて隠れてはいるが、少し見える奥二重の切れ長の目。
通った鼻筋に、程よい肉付きの唇。
モデルか?と思う程に整った顔と、ダボダボの上着にダボダボのジーンズ姿なのにカッコ良さが滲み出ているこのイケメンに、一瞬、目を奪われた。
……なんて、綺麗な人なんだろう
容姿云々では無く、ただ漠然とそう思った。
その後で、ジワジワと
(クッソ!こんだけイケメンだと、さぞかしリア充なんでしょうよ!リア充爆ぜろ!)
と、ちょっとした悪態を心の中で吐いてしまった。
するとイケメンは、ゆっくりと口を開き
「タマ、おいで」
と、ミケランジェロだかキリマンジャロだかが似合いそうな、高級っぽい猫を呼んだのだ。
(タマ!!)
衝撃を受けている俺をよそに、タマと呼ばれた高級そうは猫は『にゃ〜ん』と鳴いてそいつの足元へとしゃなりしゃなりと歩き出した。
「いや、タマって!」
思わず声に出してしまった俺に、イケメンは足元に来たフランソワーズとかダウニーとかが似合いそうな高級猫を抱き上げた。
俺のツッコミに、そのイケメンは声まで低音の甘い声で
「白い猫の名前と言えば、タマだろう?」
と答えて来たので
「それは短毛の日本猫でしょう!長毛猫に『タマ』って……」
そう呟いた俺に
『ダウニーとか言っているヤツに、言われたくないな』
と言う、イケメンとは違う声が聞こえてキョロキョロすると、イケメンに抱き抱えられている猫がシッポを動かしながら
『日本で白い猫と言えば、タマ。国民的テレビアニメでも、そうであろう?』
そう言いながら俺を見ていた。
「えぇ!猫がサザ○さん観てるの!って言うか、猫が喋ってる!!」
腰を抜かして叫ぶ俺に、猫は呆れたように笑い
『私を普通の猫と一緒にするな!主よ、アレが相棒で良いのか?』
と、イケメンに尋ねている。
最初のコメントを投稿しよう!