出会いは一匹の猫だった。

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『チリーン』  街を歩いていると澄んだ鈴の音が聞こえて、思わず足を止めた。 音のした方へと視線を向けると、シルバーホワイトの長毛猫が『とん』っと軽やかに現れた。 サファイアのような美しい瞳が、俺をジッと見つめている。 (うわ~!綺麗な猫だなぁ~) 思わずうっとりと見つめながら (名前はあれかな?マカロンとかクイニーアマンとか、そんなお洒落系の名前だな) そう考えていると、猫が『ケッ』って顔をした。 「え?……」 驚いて猫を見ると、最初に見た時と同じ顔で俺の顔をジッと見つめている。 (気のせいかな?) 首を傾げながら、美しい猫に思わず見蕩れていた。 辺りに誰も居ないのを素早く確認して 「美猫さんですね~」 って、高い声で思わず話しかけてしまう。 そっと近付き、そのフワフワの毛並みを撫でながら (この手触り……最高!絶対、ドラ○もんに出てくるス○夫のママとか、テレビや映画に出てくる両手にジャラジャラ指輪をはめた『ザマス』言葉のおばさんが飼ってそう~) なんて考えていると、「ブフっ」と吹き出す声が聞こえた。 驚いて振り向いた俺は、いつの間にか背後に立っていた男に声を失う。 身長178cmはありそうなスラリと細身で、ボサボサの漆黒の髪の毛。 健康的に少し日に焼けた肌と、前髪で覆われて隠れてはいるが、少し見える奥二重の切れ長の目。 通った鼻筋に、程よい肉付きの唇。 モデルか?と思う程に整った顔と、ダボダボの上着にダボダボのジーンズ姿なのにカッコ良さが滲み出ているこのイケメンに、一瞬、目を奪われた。 ……なんて、綺麗な人なんだろう 容姿云々では無く、ただ漠然とそう思った。 その後で、ジワジワと (クッソ!こんだけイケメンだと、さぞかしリア充なんでしょうよ!リア充爆ぜろ!) と、ちょっとした悪態を心の中で吐いてしまった。 するとイケメンは、ゆっくりと口を開き 「タマ、おいで」 と、ミケランジェロだかキリマンジャロだかが似合いそうな、高級っぽい猫を呼んだのだ。 (タマ!!) 衝撃を受けている俺をよそに、タマと呼ばれた高級そうは猫は『にゃ〜ん』と鳴いてそいつの足元へとしゃなりしゃなりと歩き出した。 「いや、タマって!」 思わず声に出してしまった俺に、イケメンは足元に来たフランソワーズとかダウニーとかが似合いそうな高級猫を抱き上げた。 俺のツッコミに、そのイケメンは声まで低音の甘い声で 「白い猫の名前と言えば、タマだろう?」 と答えて来たので 「それは短毛の日本猫でしょう!長毛猫に『タマ』って……」 そう呟いた俺に 『ダウニーとか言っているヤツに、言われたくないな』 と言う、イケメンとは違う声が聞こえてキョロキョロすると、イケメンに抱き抱えられている猫がシッポを動かしながら 『日本で白い猫と言えば、タマ。国民的テレビアニメでも、そうであろう?』 そう言いながら俺を見ていた。 「えぇ!猫がサザ○さん観てるの!って言うか、猫が喋ってる!!」 腰を抜かして叫ぶ俺に、猫は呆れたように笑い 『私を普通の猫と一緒にするな!主よ、アレが相棒で良いのか?』 と、イケメンに尋ねている。
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