五道家

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俺はその言葉を聞いて、「じゃあ、お前達の気持ちはどうなるんだよ!」という言葉を飲み込んだ。 それは……部外者が言ってはいけない言葉のような気がして。 俺が黙っていると 「まぁさ、あの桜子の父親ってだけはあるわよね~」 と、マキちゃんが呟いたので、俺は目を点にした。 「え?」 「あ!ごめんなさいね。言ってなかったわよね。桜子って、兄さんの前妻の子供なのよ。兄さんの二人の子供のうち、一人は桜子。もう一人が、空也達とは異父兄弟に当たる龍真なの」 と言われ、俺の頭はパニックになる。 「え?」 驚く俺に 「あ、勘違いしないでね。桜子の母親とは、桜子を産んで間も無く離婚したのよ。別に陽菜さんと出会ったから別れた訳ではないの。桜子の母親って、物凄い美人だったけど……性格が悪くてさぁ~。派手で性格が悪くて自己中で、金遣いが荒い。とんでもない女だったのよ。兄さんと結婚したのも、お金目当てだったしね」 と言うと 「だからね、桜子はむしろ陽菜さんが来てからの方が幸せそうよ」 そう続けた。 「そう……なんですね」 分かるような……分からないような、そんな曖昧な感情で頷いていると 「俺達は別に、母親が居なくて不幸だとは思っていない。ここでの生活も気に入っているしな」 ポツリと空也が呟いた。 俺が空也の言葉に反応を戸惑っていると 「ママはね、パパと居る時より今の方が幸せそうだから、私達は本当に良かったと思っているの。ママは、パパがいつか死ぬんじゃないかって、泣いてばかりいたから」 姫華ちゃんの言葉に、俺は俯いた。 「でも……雪夜は陽菜さんを失って、正気を失ったわ。雪夜だって、強くなかったのだもの」 大きな力を持つが故に、雪夜さんはきっと、孤独だったのだろうと察する。 「そんな中、2人はどうしていたの?」 空也と姫華ちゃんを見て聞くと 「五道家はでかい屋敷で暮らせるからな。お手伝いさんがたくさんいたから、別に……。むしろあんな事があったから、屋敷から離れられて良かったと思っている」 感情の読めない表情で、まるで他人事のように語る空也が悲しかった。 「そうね、私も今の暮らしの方が好き。すぐ近くにマキちゃんが居て、お兄が居て……そして今は、青ちゃんも居る。だから青ちゃん、そんな顔しないで」 にっこり微笑むと、姫華ちゃんは俺の背中をバシバシと叩いた。 親戚で空也の母親を取り合う……という事は、それだけ五道家では陽の気質ってヤツが必要なのは分かった。 そして……ふと思ったのは、マキちゃんが女装している理由は、多分、マキちゃんを巡る争いを避ける為なんじゃないだろうか?と。 他人の……しかも女性でそうなるのなら、直系の男性でその力を持っているとなると、それはそれで大変なのではないだろうか?と。
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