出た!五道哲真!!

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出た!五道哲真!!

 マーキング行為が終わり、ご機嫌な空也と下に降りると 「ちょっと……青ちゃん、空也臭い!」 と、マキちゃんに言われて真っ赤になる。 どうやら五道家は、特殊な嗅覚があるらしい。 眠そうに降りて来た姫華ちゃんも、眉を寄せて 「うっわ!青ちゃんがお兄臭い。お兄、独占欲強い男は嫌われるよ」 2人に『臭い臭い』と言われて、思わず自分の匂いを嗅いでしまう。 俺達一般人には分からない匂いが、五道の人間には分かるらしい。 でも、それって全部筒抜けって感じでめちゃくちゃ恥ずかしいんだよな。 「良いんだよ! コイツは俺の番なんだから」 さも当然のように呟く空也に、思わず恨みの視線を送っていると 「俺にマーキングされるか、五道家に桜子の婿養子として一生飼い殺されるか。どっちが良いんだよ?」 そう言われて 「五道家も空也も関係なく、自由な方が良いかなぁ?」 と呟くと 「はぁ? 桜子とから付き合うんだろう? お前の選択肢は、俺の番になって自由に動けるか、桜子と結婚して五道家に監禁されるかの二者択一だ!」 そう言われて頭を抱えた。 ぶっちゃけ、桜子さんは美人だしスタイルも良い。男として、あんな美人と付き合えたら光栄なんだろう。……が、俺には無理だ。 あんな完璧な人と、並んで歩く自信が無い。 寸分の狂いも無い完璧な美人に、凡人以下の俺が並んで歩くなんて……考えただけでも恐ろしい。 「えぇ! 俺、付き合うなんて一言も言ってないよ!」 「お友達始めましょうって言われていただろうが!」 そう言われて、確かに「友達から始めましょう」とは言われた。 でも「友達なら」と答えた訳で、「付き合う」とは一言も言ってはいない。 「はぁ? それが五道家に通用する訳無いだろう? いい加減、五道家の考え方を学べよな」 呆れたように言われてしまい、俯いた。 そんな事を言われても、つい最近まで俺は普通の人間として、普通に生活して来た訳だし。 陽の気質を持ち、人を幸せにする力があるなんてぶっちゃけ未だに信じられない。 「はぁ……」 溜め息を一つ零していると、リビングでタマがテレビを見ている後ろ姿が見えた。 「え? 猫もテレビを見るんだ」 そう呟くと 「タマ? タマは昨日見逃したテレビを見ているみたいね」 と、姫華ちゃんが言いながらご飯とお味噌汁を持って来てくれた。 「へぇ~。そんなにお気に入りの番組があるんだ」 そう呟きながら味噌汁を口にすると、テレビから 『は~い』 『あ~、い〇らちゃんです~』 の、毎週日曜日夜18時30分から放送されている国民的アニメの声が聞こえて来て、思わず味噌汁を吹いてしまった。 もちろん、俺の前の席に座っている空也の顔面に、味噌汁を吹き掛けてしまったのは言うまでもない。 「……おい」 怒りに震える空也に 「ご、ご、ご、ご、ごめん!」 と謝ると、姫華ちゃんが慌ててタオルを空也に手渡した。
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