出た!五道哲真!!

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「お前なぁ~! どんだけ俺に味噌汁ぶっかければ気が済む訳?」  顔を拭きながら怒る空也に 「だって普通、猫がサザ〇さんなんか見る?」 と聞くと 『失礼な奴だな! 我をその辺の猫と一緒にするな』 尻尾でパンパンと床を叩きながら、タマが怒っている。 「えぇ! でも、なんでサ○エさん?」 『はぁ? お主、タマ先輩を馬鹿にするのか!』 俺の言葉に、タマが毛を逆立てて『シャー!』っと怒り出した。 「馬鹿になんてしてないよ! って、え? タマ先輩?」 タマの発言に驚いていると 『お主! タマ先輩は、日本で一番知名度の高い猫なんだぞ! 言わば猫界のKING! 白い猫と言えばタマ! タマIS GODだ! この大戯けが!』  そう叫ぶと、物凄い速さでタマの痛烈なスナップの効いた右ストレートが俺の頬に当たった。 肉球だけど……何気に痛い。 タマは俺に一発食らわせると、何事も無かったかのようにテレビの前へと戻って行った。 そして 『ったく。タマ先輩の出番を見逃してしまったら、今度は後ろ足で蹴り飛ばしてやる」 と呟いていた。 そんなタマの後ろ姿を見つめながら、タマに殴られた頬を撫でていると 「お前、本当にタマと相性悪いな。あ、それから、次に俺の顔に味噌汁ぶっ掛けたら、翌日の朝に顔(ピー)するからな!」 タオルで綺麗に顔を拭き取ると、空也がタオルを綺麗に畳んでテーブルに置きながら呟いた。 「お……お前!」 俺が真っ赤になっていると、間髪入れずに 「空也、下品!」 「お兄、最低!」 と、マキちゃんと姫華ちゃんに頭をスリッパで叩かれていた。 「痛ぇな!」 怒る空也に、マキちゃんが空也に顔を近付けると 「あんたねぇ! 姫華ちゃんの前で、下品な事を言わないでくれない! 次に姫華ちゃんの前で下品な発言したら、あんたにべろちゅーしてやるからね!」 と叫んだ。 「べろちゅーは良いのかよ!」 「アタシは良いの! 普段、あんたみたいな下品な発言していないもの!」 テーブルを叩いて怒るマキちゃんに、空也は舌打ちをすると 「普段から言ってるけどな……」 と反論した。 「アタシが? いつ?」 白熱し始めた言い合いに 「あ~! はいはい。そこまで! お兄はさっさと朝食食べて。青ちゃん、お味噌汁のお代りは?マキちゃん、頬を膨らませて不貞腐れない」 姫華ちゃんがテキパキと仕切って行く。 「青ちゃんも、いちいち相手にしていたら日が暮れるよ」 と言われて苦笑いを返していると、お店の前に車が止まったようだった。 なんだろう?と思って窓から外を見ると、見覚えのある黒塗りの車が止まっている。 「あれ? 黒塗りのベンツだ。桜子さん?」 ぽつりと呟くと、黒塗りの車から出て来たのは背の高いヤ○ザの親分みたいな雰囲気をさせた黒いグラサンをした人物だった。 「はぁ?性懲りも無く、桜子のヤツが又来たの?」 マキちゃんがそう言いながら俺の横から窓の外を見ると 「げぇ! 兄貴」 と呟いたのだ。 (兄貴? マキちゃんの兄貴って事は……) そう考えてから 「えぇ! って事は、五道哲真?」 思わず叫んだ瞬間、ドアが開いて 「なんだ? 入るなりフルネームで呼ばれるなんて、熱烈歓迎だな」 と、渋い声で言いながらヤ○ザの親分みたいな五道哲真が入ってきたのだ。
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