出た!五道哲真!!

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「ちょっと兄貴! 来るなら連絡しなさいよ!」  顔を見るなり叫んだマキちゃんに、五道哲真は眉間に皺を寄せて 「真樹(まさき)……、なんだ? その格好は」 と呟くと、玄関で靴を脱いで中に入って来た。 空也が咄嗟に俺の前に立ちはだかると、五道哲真の眉間の皺が深く刻まれる。 何故だか、それだけでめちゃくちゃ怖い。 俺が恐怖で立ち尽くしていると 「アタシが家でどんな格好しようと、兄貴には関係無いでしょう!」 と叫んでいるマキちゃんを無視して、五道哲真が真っ直ぐに俺に向かって歩いて来る。 そして空也の肩を軽く叩き 「退け!」 と言った瞬間だった。 空也の身体が吹っ飛んで、壁に打ちつけられた。 あまりに一瞬の事で、何が起こったのか分からずに唖然としていると、五道哲真は俺の前に立ち 「なんだ、空也。随分とマーキングしていやがるな。こりゃ〜、桜子が近付けない訳だ」 そう言って頭の先から爪先まで品定めするかのように見つめられた後 「まぁ良い。この程度なら、消せるからな」 と言いながら『パチン』と指を鳴らした。 その音と同時に、一斉に家の中に黒ずくめの男達が上がり込み、俺以外の3人を取り押さえた。 「さて、小林青夜君。ちょっと一緒に本家まで来てもらおうか」 と言うと、俺に背を向けて歩き出した。 「あの……俺に拒否権は?」 「無い!」 俺の言葉に、間髪入れずに即答すると 「まぁ、こいつらの腕が折れても良いなら、反抗すれば?」 そう言われ、俺は床に押し付けられている三人を見た。 その姿はまるで、重い重力が3人にだけ掛かっているかのように動けなくなっている。 そして黒ずくめの男達は、そんな彼らの身体を地面に押し付け、右腕を掴んでいるじゃないか。 俺は冷たい汗が額から流れるのを感じながら 「分かりました。一緒に行きますので、空也達を押さえている男達を退かして下さい。空也達はあなたの能力で動けないんでしょう?」 そう言うと、五道哲真は小さく口笛を吹き 「気付いていたのか。成程、どうやら本物のようだな」 とぽつりと呟いた。 俺がその言葉にピクリと反応すると 「詳しい話は後だ。さぁ、一緒に来てもらおうか」 有無を言わせない強者の威厳で言われ、俺はとてつもなくデカい背中の後を追い掛けた。 五道哲真 彼の纏う空気や存在感が、他をも圧倒する力がある。生物全てが持つ防衛本能が、この人に逆らってはいけないと訴えてくるのだ。 俺は彼の背中を追いかけながら、彼よりも強かったという空也達の父親ってどんな人物なのかを知りたくなった。 俺が促されるまま、五道哲真の座る後部座席の隣に座るとドアが静かに閉められて、車がゆっくりと走り出した。
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