出会いは一匹の猫だった。

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「タマ、失礼な発言はダメだよ」  イケメンが高級そうな猫にそう言うと、高級そうな猫はスルリとイケメンの腕から飛び降りた。 するとそのイケメンはゆっくりと俺に近付き、手を差し出して来た。 俺がその手に捕まるかどうか悩んでいると、強引に腕を掴んで立ち上がらせたかと思うと、俺を腰から抱き寄せて首筋から耳の後ろに鼻先を付けて匂いを嗅ぎ出した。 (こいつはヤバいイケメンかもしれない) そう思った時 「やっぱり……この匂い」 と呟かれ (え?俺、なんか臭うもん食ったっけ?) なんて、冷や汗がダラダラ垂れてきた。 するとそのイケメンは、突然、俺の肩を掴んで 「間違いない!あんた、名前は?」 そう叫ばれ、そのグイグイ感に(怖い、怖い、怖い!)っと腰が引ける。 しかもこのイケメン。 距離感もバグっていて、顔が近い近い!! イケメンの至近距離の顔面圧に、俺は恐怖を覚え 「あ……あの、俺、用事があるんで!」 と逃げ出そうとしたら、腕を掴まれて 「待ってくれ! 俺は、ずっとお前を待っていたんだ!」 必死に食らいつくイケメンに (ガチでヤバい人だ!) そう思い 「すみません! 宗教とかそういう勧誘は、無理なんで!!」 と叫ぶと、俺の言葉にビックリしてイケメンの腕が緩んだ隙に逃げ出した。 「おい! ちょっと待てよ!」 背後から聞こえる声に (ちょっと待てよ!で立ち止まるのは、キム○クに言われた女子だけだよ!) そう心の中で叫び、必死に走って走って走って走って……息も切れ切れになった俺は、1軒の甘味処が目が留まった。 『幸福屋』と書かれた、公園の敷地内にある小さな甘味処に、俺は吸い込まれるように入って行った。
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