共同生活

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共同生活

 朝、それは万人に与えられた爽やかな一日の始まり。 『PiPiPiPi』 スマホのアラームが鳴り響き、俺は手を伸ばしてアラームの音を切る。 が、身動きが全く出来ない。 原因は分かっている。 金縛りにあっているのでもなければ、狭い場所で寝ている訳でも無い。 目を開けると、俺の身体を後ろからガッチリホールドしている男がいるのだ。 しかも最悪な事に、俺の尻にはガチガチに朝(ピー)ちしたモノが押し付けられているのだ。 しかも、そんな俺の身体とアイツの身体の密着部分には、例の高級そうな猫の「タマ」が寝ていやがる。  初めの頃は毎朝悲鳴を上げていたものだが、共同生活を始めて早1ヶ月。 さすがに狼狽えるのも飽きたので、スマホで毎朝呼び出す人物のLIMEに『HELP』のスタンプを押す。 すると物凄い勢いで階段を駆け上る音が鳴り響き 「空也きゅ〜ん!」 の野太い声と共に部屋のドアが荒々しく開いた。 タマはさすがと言うか、階段を駆け上る音が鳴り出す前に、安全な場所へと避難している。 そして『又やってるよ』とでも言いたげにあくびを一つすると、タンスの上で丸まった姿で俺たちを眺めている。 「空也きゅ〜ん!MY Prince」 と言いながら、俺の頸に埋めていた顔を無理矢理上に向かせてキスをしようとしている気配を感じる。 すると俺の頭の後で 「マキ……、その汚ねぇ面を近付けるな!」 と、地の底から這って出たような空也の声が聞こえた。 「やだ〜空也きゅんったら、照れちゃって!」 そう言いながら、背後から『バシ』っと鈍い音が聞こえた。 その瞬間、俺を羽交い締めしていた腕が緩んだ。 今だ!とばかりに布団から逃げ出すと、空也が額を押さえて蹲っている。 俺が素早くマキさんの後ろに隠れると 「毎朝、毎朝、飽きもせずに良くやっているわね」 呆れた顔をした美少女……もとい、空也の妹の姫華ちゃんが、眠そうに欠伸をしながら廊下を通り過ぎて行く。
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