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俺はあの日、人殺し変態イケメンと呼んでいた我妻空也に拾われ(?)、幸福屋の二階にある従業員用の住居に住まわせてもらっている。
古い日本建築だからという理由で、部屋代無料。
その上、3食賄い付きと言う非常にありがたい条件で幸福屋の従業員として働き始めた。
1階は店舗になっており、二階が俺達従業員の居住スペースになっている。
キッチンが無いので、店舗の厨房でこのお店の料理からデザートまで全て担当している五道真樹こと、『マキ』ちゃんが俺達の賄いも作ってくれる。
マキちゃんの料理は、あのムキムキなガタイと大雑把な性格とは真逆の、繊細な味わい深い料理だったりする。
お陰で、俺は三度の食事が楽しみで毎日暮らしているようなものだ。
しかし、賄いは昼食以外はきちんと決められた食事時間に食卓に居ない場合、食べないものとして食事抜きになってしまう。
(昼食は、みんな時間を分けて入るので、休憩に入るタイミングでマキちゃんがその都度出してくれる。これは本当に……ありがたい)
こんな環境なもので、此処での生活は思ったよりも居心地が良く、元々、人と接するのが好きだった俺には、お店の仕事も性に合っているみたいで、いつしかお店は人気店になっていた。
「で、いつから青ちゃんを本業に連れて行くわけ?」
朝食を取りながら、姫華ちゃんがおもむろに空也に訊ねた。
食事をしていた俺の手も止まり、寝ぼけ眼で朝食を食べている空也を三人で見つめた。
そんな俺達を無視して、空也はめんどくさそうにあくびをしながら
「そのうちな」
とだけ答えると、朝食の味噌汁をすすり始めた。
「そのうち、そのうちって……。もう1ヶ月も経ってるんだよ」
「だから俺が、こいつの能力を毎日吸収して働いているんだから、同じ事だろう?」
平然と答えている空也の言葉に
「え?お前が毎日、俺のベッドで寝てるのは……そういう事なの?」
思わず呟くと
「当たり前だろうが。他にどんな意味があるんだよ」
呆れた顔をされて言われてしまい、思わず『なるほど……』と納得してしまう。
まぁ、朝○ちに関しては、健全な男子ならそうなる訳で……。
俺に欲情する訳は無いので、エネルギーチャージという意味なら我慢しなくも……と思いかけて
「いやいやいやいや!だったら、俺も連れて行けよ!そして、二度と俺の寝床に潜り込むな!」
と叫んだ。
「そうだよね!青ちゃんだって、毎朝、起きる度にお兄に抱き着かれていて嫌だよね」
「なんでだよ」
「なんでって……逆に考えてみなさいよ!」
「はぁ?別に嫌じゃねぇよな?」
言い争っていた二人が、一斉に俺を見る。
「ぶっちゃけ、凄い嫌だ!」
素直に答えた俺に、勝ち誇った笑みを浮かべた姫華ちゃんが
「ほらみなさいよ!お兄みたいなガタイの良い男より、私が良いよね」
と言われて
「いやいやいやいや!それはそれで、犯罪だから!」
そう慌てて答えた。
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