青い歌舞伎町

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 麻美も協力してくれる。売春に踏みだそうとする少女たちに自分の性的マイノリティーは言わないが、見かけは優し気なイケメンに見えるので、ゴツイ俺よりも彼女らに打ち解けやすいんだ。  区役所通りの方に、その筋では有名な喫茶店がある。そこに夜な夜な、集まってくる少女たちは、そういう道を目指している子が多い。そこで声をかけたり、無防備に歌舞伎町内で立っている子などを探したりする。そういう時はもちろん飲まないことにしている。  彼女たちの悩み、大抵は親の虐待やいじめ、家庭崩壊などを聞いていく。俺はそのたびに義憤に駆られる。『不夜城』に憧れて家出して、2時間もあれば帰れる実家にお沙汰の自分だが、俺はマシな家に育ったんだなと痛感する。  そのなかでも今よく会っているのは有希という自称高校一年中退で上京してきた栃木の子だ。童顔で一見素朴そうに見えるが、最初は目を合わせず俯いてばかりで落ち着きもなかった。  俺のことは怖かったらしく緊張していたが、麻美が合流すると露骨にほっとした表情になった。  若干面白くはなかったが、それが麻美の魅力だから仕方がない。ゲイバーとホストクラブ、二足のわらじで鍛えているから勝てっこないのだ。  彼女は必死になけなしの家出資金であつらえたようなミニスカートに襟ぐりの空いたシャツと厚底のシューズ姿で、大きなリュックを床において例の店でぼんやりとコーヒーフロートのストローを噛んでいた。  店を出たところで声をかけたのがきっかけだ。    
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