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『不夜城』の劉順一(リゥジェンイー)みたいに故買屋をやりたかったんだが、考えてみると元手がない。小さい店一軒でもさすがに新宿、家賃は高かろうことは俺にも分かった。
しかし、歌舞伎町は案外健全じゃないか。
白昼堂々、抗争が起こって銃撃の音が聞こえるんだとばかり。『不夜城』にも書いてあったじゃないか。「ここは戦場だ」と。
戦場にしては、普通の女子高生とかゴスロリガールが平気な顔をして歩いている。案外普通のカフェとかファーストフードもある。とりあえず腹ごしらえだ。
腹が減っては生きてはいけぬ。ここは戦場だ。今見えているのは偽りの光景だ。俺はてりやきバーガーのダブルとポテトのLサイズ、コーラを頼んで腹にかきこんだ。
つまらん。俺の一世一代の挑戦はどうなるんだ。
ようやく薄暗くなってくると、わりと普通のサラリーマンやら学生やららしき男女の群れが押し寄せてきた。何だ、みんなカタギじゃないか。
ともあれ、アーチに灯が灯ったのを見たときは俺はまた目頭が熱くなった。しばしそれを仰ぎつづける。
すると、半袖短パンの太った白人のカップルに、カメラを渡された。記念撮影をしてほしいということらしい。
「オッケー、オッケー」
俺は心を込めて二人をアーチのもとにおさめた。
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