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「あー、これもかぶっちゃった」
美桜はそう言うとため息をついた。
「シークレットでないなー。なんでー」
誰が見てもわかるぐらいに、美桜は肩を落とした。
なけなしの小遣いで買ったチョコエッグにシークレットは入っていなかった。
美桜が求めているのはアニメ「キャロル イン ラビリンス」シリーズのフィギュア、それもシークレットと呼ばれる滅多に出ることがないものだ。
「キャロル イン ラビリンス」の大ファンである美桜は、漫画を全巻持っていて、全シリーズのDVDを買いそろえている。
そんな「キャロル イン ラビリンス」とコラボするという話を聞いてから美桜はチョコエッグを何個も買っている。すべては、シークレットである「無限未来編」に登場するレインの聖騎士バージョンを手に入れるためだった。
「こっちも違うな」
僕も一緒にチョコエッグを買っていたので開けてみたが、シークレットではなかった。アリスの禁呪法バージョンだった。
チラッと横目で見た美桜は、大きくため息を吐いた。
「悔しすぎる……。もうお小遣いないのになあ」
僕も助けてあげたいところだったが、もう今月の小遣いはなくなってしまっていた。これまでにもう何個買ったのか、僕も数えていない。
「大人なら好きなだけ買うことができるのになあ」
僕に向けて言ったのか、独り言なのかわからず、僕は反応すべきか悩んだ。でも「そうだね」ぐらいしか言うことができないので結局、黙っていた。
小学生の僕たちは、そうそう何個もチョコエッグを買ってはいられない。
美桜のために何か協力する方法はないのかな、そんなことを考えてるうちに僕たちはマンションに到着した。
僕と美桜は同じマンションに住む幼馴染だ。物心がついた頃から一緒にいる僕たちは、高学年になっても並んで歩いている。
「じゃ、バイバイ」
「またな」
棟が違う僕たちはエントランスでいつものように別れた。
手に持っていた割れたチョコエッグは少し溶けかかっていて、僕はそのカケラを口の中に放り込んだ。美桜の悔しそうな顔が頭に浮かんで、消えた。
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