シークレットが出てこない

11/16
前へ
/16ページ
次へ
*  スーパーのお菓子売り場に行くと、今度はチョコエッグは空になっていなかった。  ただし、空になった箱すらなかった。 「あれ……?」  僕が戸惑っていると、美桜が女性の店員に話しかけていた。次はいつ入荷されるのかという美桜の質問に、店員さんはサラッと、それでいて絶望的な言葉を言った。 「えーと、『キャロル イン ラビリンス』のはー、もう販売期間終了しちゃって、この前まであったのが最後のだったんですよねー。もう入ってこないかなー」  もう入ってこない、なんてことだ。    それは、つまりもうシークレットのレインは手に入らない。あー、もう少し早くおばあちゃん家に行っておけば! なんであと一週間早く動くことができなかったかなー! そんな妄想をしつつも僕は美桜を見た。  きっと美桜はショックを受けているんじゃないかと思ったからだ。  しかし、美桜は落ち着いた表情をしていた。ショックじゃないはずはないのに、だ。 「そうですか、ありがとうございます」  本当はショックなはずなのにそれを表情に出すことはなく、調べてくれた店員さんに御礼を、穏やかな顔で言うことができる。  なんだか美桜が年上に見えたような気がした。  さっき「修二が子供だからだよ」と言った美桜の言葉が頭の中で響いた。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加