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それからいくつかのコンビニやスーパーを回ったけれど、どこにもチョコエッグは売っていなかった。やっぱり販売期間は終了してしまったらしい。
「マジでどこにもないのかー」
歩いて三十分もかかるスーパーからの帰り道、美桜は僕の隣で大げさすぎるぐらいにため息をついた。
「んだよ。店員さんの前ではイイ子だったくせに」
「えー、あそこで落ち込んだりしてたら子供みたいじゃん」
「そーいうこと考えてるあたり、オマエも子供だろ」
そう言うと、美桜は大きく口を開けて驚いた真似をした。
「うわ、子供にバカにされた。子供の修二に」
「同じ年だろ」
と言いつつ、美桜が大人な対応ができていることが僕は少し羨ましかったりもする。
「でも、シークレットは出なかったけど……何個も協力してくれてありがとね」
「もうしばらくチョコいらねー」
「また復刻版出たら協力してもらうけどね」
「また集める気かよ!」
「今度はシークレット出したいしー。修二だって『キャロル イン ラビリンス』詳しくなったでしょ? だいぶマニアックなとこも知ってるようになったし」
美桜はわかっているんだろうか。
なんでアニメをほとんど観ることもない僕が、いつのまにかストーリーだけじゃなくマニアックな台詞まで覚えるようになったのか。どうしてなけなしの小遣いを使ってまでフィギュア集めに協力しているのか。
全部、美桜の喜ぶ顔が見たいからっていうだけなのに。
この間、美桜は僕を鈍感だとか罵ったけれど、美桜だって充分、鈍感だ。いや、相当な鈍感だ。
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