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僕が松倉に強く出たことはクラスのみんなに見られていたので、もしかしたら何かからかわれたりするのかなと思っていた。
しかし、クラスは平和だった。
男子はいつもどおり僕に話しかけてくれるし、女子だってフツ―に話しかけてくれた。ただ、松倉は僕に話しかけてこなかった。
美桜もまた松倉とはどうやら特に会話をしていないようだった。いちいち突っかかっていた松倉は美桜に話しかけることもなくなった。
あの二人が近距離ですれ違ったりするたびに、クラスの空気がそこだけ氷の上を歩くときみたいな緊張感になることは僕も気になっていた。
僕も関わってしまっただけに何とかしたほうがいいのかなと思っていたが、この前、
「変に男子に助けられるほうが、周りの女子は冷たくなる」
と美桜が言っていた言葉が気になって、何もできなかった。
それからしばらくして一学期が終わる頃、美桜が放課後、スッと一人で教室を出ていく姿を見た。いつもなら僕や誰かと一緒に出ていくのに。なんとなく誰にも見られていないかを気にしているみたいで、教室の中を何度か確認しているようだった。
掃除当番とかなのにサボるとかなのか?、と僕は適当なことを考えていた。
すると、しばらくして松倉も教室を一人で出ていった。
松倉もまた美桜と同じように、誰にも見られていないかを気にしているみたいで、教室の中を何度か確認しているようだった。
これは何かあるんじゃ、と僕は「先に帰る」と男友達に声をかけて教室を出た。僕もまた誰もついていないかを気にしながら。
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