シークレットが出てこない

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*  スマホゲームの時間を我慢して向かったおばあちゃん家では、僕はいつものように大歓迎された。  その場で食べきることなんてできないお菓子だったり、みかんだったりを僕にくれた。滅多に孫たちが来るはずもないのに、どうしていつもお菓子が準備されているんだろう。  ここにチョコエッグがあったらなと思ったけど、おばあちゃんに「キャロル イン ラビリンス」のチョコエッグを買っておいてというのは無茶かなと思った。 「はい、修二くん。本とか買ってね」  母がふっくらしたような外見のおばあちゃんは、母が見せることがない優しい笑顔で僕に封筒を渡してくれた。この中には間違いなく僕へのお小遣いが入っている。 「ありがとう、ばあちゃん!」  僕は母に見つからないうちに、持っていたカバンにその封筒をしまいこんだ。見つかってしまったら「修二の将来のため」という名目で取り上げられて、二度と見ることができなくなってしまうだけだ。  お金が必要なのは、「将来」じゃなく「いま」なんだ。美桜に喜んでもらえるのは「いま」なんだ。  その後、母とおばあちゃんがそれぞれの旦那(つまり僕の父とおじいちゃん)への愚痴を延々と話し続けてしまい、外が暗くなるまで帰ることができなかった。  なぜ母たちの話はいつも長いんだ。
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