シークレットが出てこない

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 お菓子売り場に辿り着いたとき、僕はその場で立ち尽くしてしまった。  ついこの間まで下から二段目に並んでいたはずのチョコエッグがなかった。チョコエッグがあった場所は空になった紙の箱があるだけだった。  チョコエッグは売り切れてしまっていた。  ついこの間まであんなに売っていたのに。  ふと横を見ると、ある大人の男がスーパーのカゴを持って歩く姿が見えた。  そこには、僕が探していたチョコエッグが入っていた。1個や2個ではない。「キャロル イン ラビリンス」のチョコエッグがたくさん入っていた。10個以上は入っているかもしれない。  なんであんなたくさん買っていくんだ。僕はイラっとして、その人に何か言ってやろうかと思った。  しかし、どう見てもぼくより二回りは大きな身体の大人に、身長150センチもない僕が勝てるような気がしなかった。  そんな僕を気にとめることもなくその人はレジへと歩いていった。  僕が呆然としていると、幼稚園児ぐらいの女の子が僕にぶつかっていた。その子の母親らしい人に「ごめんなさいね」と言われて、僕はなんだか曖昧に笑った。  びしょ濡れになったスニーカーが冷たくて重かった。  その後、コンビニや別のスーパーに行ったけれど、チョコエッグはどこにも売っていなかった。  そして、月曜日に小学校に行くと予想もしていない出来事が起きた。
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