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004
父である王のいる謁見の間には、すでに他の大臣たちも控えていた。皆誰もが、私の顔を見た瞬間に視線を逸らす。
なんなのよ、その態度は。
一応、私この国の第二王女なんですけど?
「参りましたお父様」
「来たかエリザ」
「はい。何やらお急ぎとのことで……」
「うむ」
父は私の顔を見るなり、何かを言いかけたまま下を向いた。そして、自慢の白い顎髭を何度も触っている。
基本、父は今までこれでもかというほど私を甘やかせてきた。
それもそう、私はこの父譲りのハニーブロンドの長い髪にブルーの瞳。
父はどちらかといえば、自分によく似てそして美人な私のことを愛していたと思う。
だからこそ、一応結婚適齢期であっても婚約者すらいない箱入り娘なわけだし。
「なにやら、私の結婚が決まったとかなんとか?」
このままではらちが明かないため、こちらから切り出す。
そして父の周りの大臣たちの顔を見れば、益々目線を合わせようとはしなかった。
「お父様?」
「うむ……」
「誰か、状況を説明出来ないのですか?」
「いや、わしからしよう」
「はい、お父様」
「お前の結婚が決まったんだ」
「お相手はどなたなのですの?」
王女と言う立場上、政略結婚は免れないなぁとは薄々思ってはいたけど。
普通だと、婚約期間を経てからの結婚となるハズ。それがいきなり結婚だなんて……。
「隣国のアゼル王だ」
「は?」
我ながら、らしくない言葉だと思う。でも思わず素が出てしまうほどの、それは爆弾発言だった。
隣国アゼルは戦の好きな好色王が治める国。
確か王様は齢60を過ぎていたハズ。しかも王妃はすでに12人ほどいたんじゃないかしら。
そんな人のところに嫁げですって? 冗談でしょう。
「よりによって、60過ぎの狒々爺の13番目の王妃にだなんて」
こっちは初婚なのよ。それにまだ17歳。中身は違うけど。
しかもこの国一番の美女と言ってもいいくらいなのに、じいさんロリコンすぎでしょう。
向こうの世界だったら、絶対に捕まる案件だからね。
うわぁ、ないわ。うん、絶対にない。
でも、こんなに言いにくそうに切り出すってことは相当のことがあったってことよね。
一応、聞くだけは聞くけど。
「エリザ、すまない」
「お父様、すまないでは分かりません。きちんと経緯を説明なさって下さい」
もちろん納得できない内容なら、絶対に破棄させてやるんだから。
内心息巻く自分を抑えつつ、あくまでも可憐で儚げな王女の表情を私は浮かべた。
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