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純白の壁に金箔で装飾された、贅沢かつ広々とした舞踏ホール。
煌びやかなシャンデリアの灯りが、真夜中の会場を昼間のように明るく照らしている。
優雅なワルツの調べに乗って踊る男女。
楽しげに談笑する貴族たち。
今まさに宮廷舞踏会が開かれているホールのど真ん中で、男が高らかに宣言した。
「ビクトリア・フェネリー侯爵令嬢。貴殿との婚約を破棄する!」
場内が一瞬にして静まり返った。
人々の視線が、宣言した第二王子オスカーと、それを突きつけられた私――ビクトリアに集まる。
突然、婚約破棄されたにもかかわらず、私はこの場にいる誰よりも冷静だった。
「かしこまりました」
淡々と了承する私に、偉そうに胸を張っていたオスカーが一瞬たじろぐ。
私が取り乱す姿を想像していたんだろうけど、おあいにく様。
オスカーの浮気には気付いていたし、こんな政略結婚に未練はないのよ。
国王陛下と父が決めた結婚に口出しできないから、今までずっと我慢していただけ。そっちから破棄してくれるのなら好都合。
とはいえ、『はい、そうですか』と物分かりよく引き下がるのも癪だわ。
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