古村市生活環境課

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 時計の針が午後三時を指し、あと二時間かとあくびをかみ殺していると、一本の電話が入った。まあ私には何の関係もないだろうとトイレに立とうとしたら、その電話に出た職員さんから声を掛けられた。 「輪田さん、タヌキの回収に行ってもらってもいいですか」  タヌキは日本古来の在来種だ。それを回収という事はつまり野生動物の屍骸の回収という事。これもまたこの課の仕事である。放置しておくと蛆が湧いたりカラスが集まったりと近隣住民に迷惑だから、生活環境課としては当然の業務だ。  最近は力仕事に加えこういった業務も直接行うようになっていたので、車(もちろん市役所の車で、優先的に私が使っている)にはゴム手袋も黒のゴミ袋も常設してある。  動物の屍骸、特に野生動物はどんな病原菌を保有しているか分からず危険なため、黒のビニール袋に詰めたらすぐに焼却プラントに行き、その時使用したゴム手袋と一緒に焼却炉に投げ入れないといけないことになっている。  電話を受けた職員さんがゼンリンの地図を広げる。一緒に場所を確認したら意外と近場の国道沿いだった。その地図と照らし合わせるように私はタブレットに表示された地図のその場所に旗を立てた。  
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