国道と市道

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 動物に限らず、国道の管理全般は国土交通省の管轄で、今回の場合国道への落下物扱いで、生活環境課としては手出ししてはいけないという事のようだった。そんな四角四面な事をと感じてしまったが、現実問題として国道上で勝手に作業をして万が一事故にでもあってしまっても補償が出来ないという事情があるのだ。 「とまあ、タヌキの件は彼らに任すとして」  説明を終えたまさみさんは何故か車には戻らず更に遠くへと進んでいった。つられるようにその後に付いていくとまさみさんは道路と並行して設置されている側溝の、蓋のないところでゆっくりとしゃがみ込んだ。 「ここ、気付かなかったでしょ」  まさみさんが指差すところを覗き込むと、そこにはコンクリートの白に同化するように嵌っている小型の犬がいた。 「すでに息絶えているわ。毛並みはいいし飼い犬のようね。でも」  そう言いながらまさみさんはそのワンちゃんにゆっくりと手を伸ばしその背中をゆっくりと撫でた。 「真新しい首輪の跡があるわ。きっと亡くなった後に飼い主がここに捨てたのね。なんてひどい事を‥‥‥」  私が送信した画像からは遠く離れたこの場所の、しかもほぼ同色化しているワンちゃんに気が付いたまさみさんに感嘆するとともに私は怒りで肩が震えた。そんなひどい飼い主がこの世にいるのという事実にだ。  しかし怒りに震える私とは対照的に、横顔で良く分からないとはいえ、まさみさんは慈愛に満ちたその瞳を潤ませているように見えた。
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