国道と市道

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 私が無言で立ち尽くしていると、まさみさんは勢いよく立ち上がり私の方へと向き直った。 「ほら、ぼーっと突っ立ってないでこのコを袋に入れるわよ」  そこにはいつもと同じ、毅然とした表情のまさみさんがいた。そう、これは私たちの仕事(・・)だ。国道ではない場所での動物の屍骸の回収と焼却。プラントの稼働時間は十七時まで。時間も余りない。  私は急ぎ足で車へと向かいビニール袋とゴム手袋を手にして現場に戻った。まさみさんはあらかじめゴム手袋を用意していたようでその手にすでに装着していた。  小型犬とはいえそれなりの重量はあるので、袋をまさみさんに預けその口を開いていてもらい、私はそのワンちゃんを拾い上げるとゆっくりと袋へと納めた。  すぐに回収してプラントに向かう。市役所に戻るのかと思っていたまさみさんはそのまま車を私の後ろに付けた。一旦事務所に顔を出してからプラント脇のベルトコンベアの上に袋ごと載せると、ベルトコンベアがゆっくりと稼働しだす。その先に待っているのは地獄の窯への入り口だ。  ワンちゃんがそのままあの劫火の中へと吸い込まれていく姿を想像して、私は思わず手を合わせた。目を開けるとまさみさんはまだそうしていた。まさみさんはこのためにここまでついてきたんだとその時分かった。
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