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都内某所の要塞のようなマンションに着き、後部差席でずっと寝ていたあたしは、春奈おばさんに起こされる。
「お疲れ様、私、車停めてから行くから」
「お疲れ様です」
白いワゴン車のスライドドアを開けて、背伸びをするあたし。
たくさんある玄関はパパラッチ対策ようでどこから外出するかわからないようにしてある。
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エントランスに1人の男の子が、ポケットに手を突っ込んだままあたしを待ってる。
「素を出して気持ちよかった?こっちは、困ったよ大いにね!!」
焦げ茶色の髪は天然パーマ、切れ長な瞳は、諦めたようなくすんだ瞳をしている。彼に頼んでアカウントを動かしてもらっているのに。あたしの髪がヘッドレストでくしゃくしゃになっているのを見て。
はぁぁーーーーーーあ
と長めのため息。
丸眼鏡越しに睨み付けてくる彼は、子役くん。今は高校受験のため、芸能活動を控えている。声変わりをした時から、なんか違うと戸惑われているの知ってるよ?
「ごめんって」
謝りながら、手のひらを広げ、彼の脇腹を指で小突いても、飄々としている。テンションが明るすぎるあたしと、彼は非対称なの。
2歳下の彼がいるから、あたしは猫かぶりでも鳥肌立ってても、叩かれても立てているの。泣きぼくろが左右にある彼は、昔泣きの演技で注目された。
「水野くん、ご指導お願いいたします」
親の七光りなんて言われたくないから、子役くんと頑張ってるのに。
「角度が違う、手はまっすぐに!!」
15歳の水野裕太くんは少々、厳しくて大変なのよ。
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