私の知らない「きみ」の味

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「今日さ、オムライス食べてみない?」   地元に1つしかない小さなショッピングモールの一角にある、これまた小さなアイスクリーム屋さん。そこが私と愛奈の週末の集合場所だ。ただでさえ人気のないショッピングモールからも厄介者のように追いやられているこのお店は、日曜の昼間というのに客は私たちしかいなかった。  愛奈が私に見せてくれたスマートフォンには、とろとろの卵がウエディングドレスのようにバターライスに覆いかぶさった、いかにも高級店発祥のようなオムライスが映っていた。愛奈のやけにビビッドピンクなスマホケースと相まって、なんだか目がちかちかする。 「えっとつまり……愛奈は私に死んでくれと言いたいのでしょうか?」 「んなわけないでしょ! 本気で私は瑞希とオムライスが食べたいの!」  そう言いながら愛奈は右手に持った小さな水色のスプーンをぶんぶんと振り回した。愛奈はこの店でいつもチーズケーキ味のアイスを食べる。そして私は決まってチョコミントを食べる。私の食生活について基本的に一切口を出さない愛奈ですら「これだけは瑞希が人生損してると思う」と口を出すが、チョコミントの爽やかさを知らない愛奈の方が、私なんかよりもよっぽど人生の半分以上を損していると思う。 「ばかなこと言わないでよ。私がオムライス食べれないこと、知ってるでしょ?」 「だから、卵じゃなきゃいいんでしょ? 卵じゃなきゃ」
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