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「あまり人目につかないように、気をつけなければな」 街を行けば、ティアの美貌に皆が気づき、大騒ぎになる。 食料などの調達は、シュワルトに任せ、ミランとティアは田舎道を選んで歩いた。 シュワルトで一足飛びに飛んでも良かったのだが、さすがのシュワルトでも女二人を抱えて飛ぶのはかなりの重労働だということで、陸路を選ぶ。 しかも、何かあった時にシュワルトには飛んでもらわねばならないということもあり、できる限りシュワルトの体力を温存しておきたいと、ミランは考えた。 メイファンからの追っ手がつくことも予想して、それなりに険しい道を通っていく。 すると、宮廷の中の狭い範囲でしか歩いたことのない、もともと体力のないティアの足が遅れるようになった。 「……すみません、足を、はあ、引っ張ってしまって……はあはあ」 「気にするな。それより、こんな道ばかりですまないな」 「いえ、私の……至らなさです」 ティアが唇を噛むのを見て、ミランはそっとティアの頬に手を伸ばした。 「お前が至らぬというなら、世のお姫様はみな、至らないということになる。あまり気に病まなくていい」 「……ミラン、」 「それに、ティアの良いところはたくさんあるしな」 ティアの顔が少しずつ明るみを増していく。 「本当? 例えば?」 「シュワルトになびかないところ」 ぷっと、吹き出す。 「そんなことがですか?」 シュワルトがこの場にいて、二人の会話を聞けば、きっとぎゃあぎゃあと不満を吐き出すだろう。 「それも一種の意志の強さだ」 「ふふふ、本当ですね」 心底、楽しいという表情をして、ティアは笑った。 「他にもある」 「他にも?」 笑顔をそのままに、首をかしげる。ティアの黒髪がフードからひと束落ち、さらりと流れた。 空高く、雲雀が回る。その囀りが、ピーヒュルルと頭上で響いた。 「お前が、兄上殿のために薬草を集めていることだ」 ティアが腰に下げた麻袋に、ふいに手を伸ばした。 「こ、これは、そういうものでは……」 「まあいい、さあ行こう」 何事もなかったかのように、ミランが先に立つ。
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