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リクエストだという流行のJ-POPが聞こえてくる。
アップテンポのこの曲よりも、オレの心臓の方がドクドク速くて、いつもよりもはるかに瞬きが多くて、背筋もピンと伸びちゃって、でも、口元だけはどうしようもなくにやけてしまって、気がつくと、かなり格好悪い姿のまま「♪言えないけど君が大好き~」なんて、サビを口ずさんでいた。
クッキーちゃんって、だれだ?
クラスの女子を思い出す。
中学から一緒の腐れ縁のミカ。まさかあいつじゃないだろう。
ガサツなミカがあんな乙女チックな投稿をするわけがない。
去年の誕生日に「合格祈願」だと、ヘビの皮をくれたくらいだ。
じゃあ、最近よくしゃべるようになった桜木さんとか。
席が隣になって、同じバンドが好きってことがわかって、音楽雑誌の貸し借りをするようになった。
肩までのサラサラの黒髪と、きりっと太い眉毛がエキゾチックでなかなかいい。
でもタイプ的には、あんな乙女チックな作戦はたてないような気がする。
一学期の球技大会の時にお菓子を配っていたのは、藤田さんだった。
藤田さんは、だれとでも気軽にしゃべって、男子からも女子からもウケがいい。
藤田さんなら、ありえるだろうか。
それとも、話したこともないような、クラスの隅っこで女子だけでつるんでいるような女の子たちのだれかだろうか。
まさかの田辺ちゃんだったらどうしよう。
ふわふわクルンのやわらかい髪型を思い出す。
「そうなん?」と京都弁で笑う笑顔を思い出す。
いやいやいや。考えるだけでおこがましい。
田辺ちゃんは、オレら一年男子のアイドルだ。
その田辺ちゃんがオレを好きだなんてことになったら、男子すべてを敵にする。
火照った頬をピシピシ叩く。
ラジオでは、すでに受験対策に話題がうつっている。
時計は0時を回り、日付はもうオレの誕生日。
もちろん、ドキドキはおさまらず、眠れるはずもなかった。
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