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クレアの心からの告白は、今までとは違う道を歩もうと決意したバイロンを少なからず動揺させたが、すんなり首を縦に振ることは出来なかった。
「何て答えればいいのか分からないが…今の私は君と一緒に…あ痛っ!?」
「バイロン!」
防御の魔法が付与されているローブを着ているので痛みは無いのだが、それなりの衝撃を背中に感じ振り向くとヴェールを投げ捨て激昂する母が睨みつけている。
「貴方は人としての生活ができなくなったからと言って人の心まで無くしてしまったと言うの?」
傍らには先程まで腰掛けていた車椅子が転がっており車輪がカラカラと音を立てていた。
「どう考えても貴方の負けよ!」
「車椅子を投げるとか…負けとかそんな問題ではないでしょう…」
「いーえ貴方の負けよ、そろそろ観念しなさい、言っておきますけど大前提として貴方は最初から間違ってますからね」
「私が間違っている?」
「そうです、いつ私がクレアさんを幸せにして下さいと頼みましたか?逆ですよ、貴方に人としての幸せを与えることが出来るのはクレアさんしか居ないのですから」
「クレアさん、こんな朴念仁だけど側にいてあげてくれないかしら?」
「えっ?わ…私が?」
クレアの手を取り、懇願する母の姿が無性に愛おしくなる『本当の母もこんなふうに思っていてくれたのだろうか…』逢えなくなった霊魂に語りかけるように天を仰いだ。
「人としての…幸せを…」
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