龍の御子バイロン

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「クレアさん、出てらっしゃい!」  自分で作った結界が結界内の魔力を感じ取ることが出来ないほど強力だったのがそもそもの失敗だ、しかし、まさか母の口からその名が出るとは思わなかった。 「お久しぶりです、バイロン様…」  東屋から現れたのはバツの悪そうに会釈する()同僚のクレア・クレメンス嬢だった。 「…何でココにクレアが居るんだ?」 「何でココに居るんだ?じゃないでしょ!クレアさんは貴方の身を案じて、こんな北の果てまでやって来たんですよ!」  車椅子を降りた母は癇癪をおこした子どものように詰め寄ってきた、さっきまで執事に支えられながら立っていたのに。 「母上…足は?」 「足?なんとも無いですよ!」 「え?てっきり御身体の具合が悪いのかと…」 「何いってるの『大丈夫ですとも』って言いましたよね?」 「良かった…私の早とちりでしたか…」  ゴホゴホと咳までしていたのも演技でしたか…安堵のため息と共に苦笑いが出る。 「それよりも『何でもする』って言いましたよね?貴方、こちらのクレア・クレメンス嬢と結婚なさい」 「えっ?」 「お、奥様?わたし…」 「クレアさん!」  クレアが何か話そうとするのをピシャリと止め「主人が亡くなってからこんな所にお客様が見える事もなかったわ…『そんなつもりは無い』なんて言わせないわよ、貴女こんな辺鄙(へんぴ)なトコまで来て手ぶらで帰れると思ってらして?」とまくし立てた。
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