龍の御子バイロン

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 母はベールで隠された奥で不敵に微笑んでいるように思える、あの迫真の演技はこの為でしたか…しかし…手ぶらで返さないって…もう少し言い方があるでしょうに。 「母上、結婚は出来ません」  それでもその願いを聞くわけにはいかなかった。 「バイロン、貴方!?」 「ええ、何でもするとは言いましたが、私に出来ることなら…です」  絶句する母を諭すように話したが、それでもやはり納得いかない様子だった。 「三ヶ月前に王宮から知らせが届いたわ…貴方が殉職したと…でもその後直ぐに現れたクレアさんに『バイロン様は生きてます』と言われた時、どんなに嬉しかったか…」 「貴方が生きていた事じゃありませんよ、遅かれ早かれ貴方は魔族との闘いで命を落とすと思っていましたからね」 「貴方は魔法使いとして法外の力を持っているわ、だけど一人の人間として貴方の事をココまで思ってくれる人が居たって事が嬉しかったのよ、お願いだから私の目の黒い内に人としての幸せを手に入れて頂戴…」  亡国の皇子として逃亡の生活の果てにこの王国に辿り着いた、授かった力により宮廷魔導師として働き人が羨むような生活も手に入れた、だが、常に一人であることを遠く離れた地に暮らす母は見抜いていた。 「人としての幸せですか…それなら尚の事クレアと結婚する事は出来ません」 「何で?まさか他に好きな人が居るっていうの?」 「まさか、その逆です、もし仮に…あくまでも仮定の話ですが…私が結婚出来るとしたらクレア以外には居ないでしょう」
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