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六・アメリカ修行。
島崎マネージャーは岡田社長から、支度金、百万円とラスベガス行きの航空券を渡された。
「どうやって、一年間、百万円で生活するんだよ!
生活費は、自分で稼げって?
ふざけやがって。
あの社長にだまされた……
飛行機もエコノミーで将来を有望されてる物の扱いか!」
「もう、お父さん!
いやっ……マネージャー、 そんな事言っても仕方ないないよ。
本当、ごめんね!若菜。」
「いや、いや、大丈夫だよ。」
実は若菜も、これから始まる珍道中に不安を感じていた。
羽田空港を出発しロサンゼルス経由でラスベガスに到着した。
「あぁ〜、疲れたぁ!
初めましての海外だよ。
茜も海外初めて?」
「ううん。
八歳まで父の仕事の関係でニューヨークにいたんだ。」
「お父さんって、あのお父さん?
なんか偉いんだね……」
「偉くないよ!
ただの商社マンだっただけ。」
「茜も、英語は喋れるの?」
「二年間だけ、アメリカンスクールに通ってたから少しわね。」
最初の一週間は、歌劇団側がホテルを予約してくれていたがその後は、自分達で宿探しだ。
ホテルに着いた島崎は早速、大手のエンターテインメント業界に電話を入れ二人の営業活動を始めた。
しかし、この業界の経験の無い島崎は大手はもちろんラスベガスのナイトクラブなどに電話をしても、全く相手にされなかった。
「仕方ない……」
島崎は、二人を連れ出しラスベガスの夜の街を歩き、飛び込みで営業活動を開始した。
「お父さん、怖いよ!」
「俺は、お前達のマネージャーだ。
安心しろ。」
ナイトクラブやパブ、時にはストリップ劇場まで足を運んだ。
島崎は、得意の英語と商社で培った営業経験を生かしたが、なかなか仕事は貰えず、店から島崎は蹴られ、放り出されたりもされた。
茜も父の姿に感謝を感じた。
しかし、ホテル生活も苦しくなり、安いモーテルなどを探し歩いた。
島崎マネージャーは必死だった。
そして頼もしいマネージャーに付いて行く事を二人で誓い合った。
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