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【この二人の演技を見て下さい。】
島崎の営業努力により、少しずつ仕事が増えて行った。
ショーパブの前座やナイトクラブなどでは、ポールダンスを披露した。
歌劇団で磨かれたダンスは、現地でも受けて、チップなどで生計が多少出来るようにはなったが、二人を受け入れてくれる店は、ほとんどが酒場。
「全然、聞いてくれないね……若菜。
そして客がやらしい目で見るのよ……」
「確かに……
この前、胸にチップ入れられそうになって、平手打ちしそうになったよ!」
そんな生活が三カ月位続き、島崎は新しいジャズバーを発見した。
古めかしいドアを開けると、若いスタッフが出てきて島崎は、出演交渉の話を持ちかけた。
するとタバコの煙が充満している人混みの奥から一人の老人が出てきた。
オーナーのジミー・ブラウン(七五歳)
(これから、若菜と茜にとって人生を左右する、重要な人物との初めての出会いであった。)
【どうした?トム。】
【この人達が、ここのホールでダンスを踊りたいそうです。】
【初めまして、私は日本から来ました、島崎と申します。】
【私は、ここの支配人のジミー・ブラウンです。】
【日本人ですか?】
【はい?】
「私、日本語、少し話せます。
日本語で大丈夫ヨ」
島崎は、気が抜けたかのように、肩の力が抜けたように話し出した。
「後ろにいる二人は、福岡歌劇団に所属していて、修行でアメリカに来てるんです。
そして、私は、マネージャーの島崎と申します。」
「何て言う事だ。
修行でか?
私は昔、ミュージカルのプロデュースしていて日本にも長期で何回も行ってたよ。
そして、日本のエンターテイメントの歌劇団は、よく知ってる。
しかし、ここはジャズの店、ジャズを歌ったりピアノを弾いたりは出来るか?」
二人は、福岡歌劇音楽学校でジャスとピアノは教わっていた。
二人は何も考えず、「大丈夫です。」と、とっさに答えた。
「じゃ明日、見せて貰えるかな?
結果は、見てから判断させてもらおう。」
「若菜、明日大丈夫?
私はピアノは大丈夫だけど、ジャズのピアノって初めて……
そして、ジャズとか習ったけど人前で披露するほどじゃないわ!
ましては、ここはジャズ発祥の地アメリカよ!」
「そんな事、分かってるて!
私なんかピアノは、やっと二、三曲弾けるレベルよ。
茜、まだ私達は花の力を借りないと無理なんだよ。
私も、実力で勝負したいけど、いつも私の近くで沙月が応援してる気がするの。」
「沙月が……?
実は、私も若菜と一緒にいたら、沙月が近くで見ている感じがして……」
「私達、二人じゃないかもね。
沙月も、ちゃんと私達を見てくれてたんだよ。」
「うん。そうだね!
私達が一人前になるまで沙月は、見守ってくれてるかも……」
「明日は、沙月のパワーを借りて派手に行っちゃう?茜。」
「了解!」
島崎マネージャーは、二人の軽返事な言葉に不安を抱いていた。
本当に大丈夫かぁ……?
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