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七・飛躍
三人は、オープン前のジャズバー、【リバーサイド】の中をジミー・ブラウンに案内されステージに上がった。
茜は、ステージの隅にある黒のピアノの前に座り、赤い薔薇の匂いを嗅ぎ鍵盤の前に置いた。
ステージの中央には、マイクスタンドに昔から使われていたであろうレトロなゴールドマイクが置かれている。
若菜はゴールドのマイクを握り、胸に付けたかすみ草を嗅ぎ、大きく深呼吸して、茜と目を合わせて歌い始めた……
【♪窓にえがお……
あーロマンス列車よ “A ”T R A I N
甘い夜風……
ばら色の夢をのせ♪】
「おっ……
この曲はビリー・ストレイホーンの曲ではないか。」
「そうです。
ビリー・ストレイホーンの曲を美空ひばりがカバーした【A列車で行こう】曲です。」
「あの美空ひばりが、カバーした曲か……
彼女は、知ってるよ。」
若菜と茜の絶妙なハーモニー、そして茜の強弱をつける繊細なピアノ。
そして二人は、歌い終えた。
島崎マネージャーは、あまりの迫力で腰の力が入らない。
ジミー・ブラウンは即答した。
「素晴らしい!
もちろん合格だよ。
今日から、ここで思う存分やってくれ。
君達にはパワーがある。
しかし、まだ足りないのは唄を思う気持ちがまだまだだ。
おそらく美空ひばりと比べてみたら、きっと分かるはずだ。
それに、ここは本場のジャズの街、ジャズには古い歴史がある。
それを出すのは大変だが、ここで本場のジャズを学んでくれるか?」
「はい!勉強します。」
そして、その日から二人はジャズバー、リバーサイドで一日一回、週五回の出演が決定した。
「たまげたぞ!
凄い迫力だった。
しかし、ジミー・ブラウンって人、本当、解って言ってるの?
俺なんか、鳥肌立ったよ。」
「解ってないのはお父さんでしょ!」
「茜、マネージャーだよ。」
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