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二人の評判は直ぐに広まり、酒を飲みにくる客よりジャズを楽しむ客層が増えた。
若菜も茜もレパートリーを増やし、店は座る場所が無いくらいの盛況ぶりで遠くからも二人を観るために訪れる客も少なくなかった。
【素晴らしいぞ!あの二人組。】
ジミー・ブラウンも二人の成長の速さに唖然としていた。
「たった、二週間でジャズを自分達の物にした……
ジャズを愛する古き客まで彼女達の魅力に吸い込まれている……
島崎マネージャー、ここはジャズの店だが明日からラストまで、二人の全てを見せて貰えないか?」
「それはジャズだけではなく、ダンスや演劇も良いんですか?」
「是非、観たい!
宜しいですか?島崎マネージャー」
二人は残り一週間、ジャズバー、リバーサイドのステージを使って二人だけのオリジナルのショーを考えた。
「茜、私達は歌劇団だから歌劇は、やっぱり取り入れなくっちゃね。」
「でも、時間がないわ……
若菜は英語喋れないし…」
「ごめん……
じゃ、歌とダンスで行こうよ!
音楽学校で皆んなで歌った【糸】にしない?」
「糸、懐かしいなぁ…
なんか、沙月も応援してくれる感じ。」
「だって私達、見えない糸で繋がってるんだよ。
よし!決定。」
「それと、もう一つ、なんか無いかなぁ」
「日本から来たんだから、日本らしさを感じる何かを入れてみる?」
「日本らしさ…?」
「この際、歌劇音楽学校で習った、日本舞踊とか入れてみる?」
「こっちで受け入れてくれるかなぁ。」
「やってみないと分からないじゃん!」
「歌劇も時間がないから、日本語でやってみようよ!」
「お父さん、日本舞踊に着る着物と扇子、日本舞踊の音楽テープ持って来てる?」
「大丈夫!
若菜ちゃんの分も、ちゃんと持ってきてるよ。」
「もう、茜……
お父さんじゃないでしょ!」
「ごめん、なかなかマネージャーとか言えなくて……」
急な事で時間がなく、これが精一杯の二人が考えた公演内容だった。
島崎マネージャーは、二人の話し合いに耳を傾けて、うっすらと泣いていた。
茜、成長したな…
そして当日、ジャズバー、リバーサイドには、二人を待つ客が長蛇の列になっていた。
そこには酒場ではなく、劇場の雰囲気だった。
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