赤と白 2部

2/44
前へ
/44ページ
次へ
    一・付き人生活。      福岡市内のワンルームマンションで若菜は始めての一人暮らしが始まった。  とは言っても下の階には、茜もいる。  今日から二人の付き人生活がスタートする。  ピンポ〜ン♪ 「若菜!起きてるー!  急がないと、間に合わないよ!」   「起きてるって!  服選びに時間がかかって!  もうこれでいいや!  終わった!  すぐ出る、待ってて!」    歌劇音楽学校を巣立って行った同期の仲間は、早くも六月二〇日から始まる初舞台に向け、チーム分けが行われ、シリウス、ペガサス、北斗、カシオペア、オリオンに各自が配属された。  もちろん、そこには若菜と茜の名前はなかった。  二人は福岡歌劇座に到着し、周りを見渡した。  改めて見たら、迫力満点の建物だ。 「茜、私達いずれ、ここで芝居するのね。」 「そうね……  でも、ゆっくり観てる暇なんかないわよ。急ごう。」  福岡歌劇座の中にある事務所に着き、社長室に呼ばれた。  そこには、社長の机を撫でて、ニヤけている岡田がいた。 「また、会えたねぇ!  どうだぁ!似合うかぁ?  人は努力を重ねると、神様はちゃんと見てくれてるもんだ!  君達も華咲舞と舞鶴翼の全てを盗んで次世代のスターになってくれ!  待ってるぞ!金の卵ちゃん!」 「は、はい…」 「は、はい…」  そして、華咲舞と舞鶴翼が社長室に入って来た。  初めて近くで見た若菜と茜は、二人のオーラに吸い込まれた。  華咲舞(二八歳 本名 前田美智子)  清楚でエレガントな雰囲気。  舞鶴翼(三〇歳 本名 木戸小百合)    背が高く、サングラスをずらして、鋭い目線で二人に小さな声でつぶやいた。よろしく!」  華咲舞は早くも岡田に文句を言った。 「こんな子が、私の付き人?  私、全ての事を把握して、私の身の回りの世話をしてもらいたいの!  こんな子で大丈夫?  自分の事も、ちゃんと出来てないみたいだけど……」  若菜は、自分がスッピンだった事に気付いた。 「まぁー若いから通用するけど、服のセンスもゼロね!  人選ミスじゃないの?  まぁ、いいわ!頑張って……」  舞鶴翼は分かっていたが、岡田社長も含め若菜も茜も華咲舞の見た目とのギャップに唖然とした。    舞鶴翼は茜を見るなり、「君は本当に男役なの?  まぁ、いいや!」  そして、二人の付き人生活がスタートした。  
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!

26人が本棚に入れています
本棚に追加