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八・飛躍
三人は、オープン前のジャズバー【ジャズバー、リバーサイド】の中をジミー・ブラウンに案内されステージに上がった。
茜はステージの隅にある黒のピアノの前に座り、赤い薔薇の匂いを嗅ぎ鍵盤の前に置いた。
ステージの中央には、マイクスタンドに昔から使われていたであろうレトロなゴールドマイクが置かれている。
若菜はゴールドのマイクを握り、胸につけた、かすみ草を匂い深呼吸して、茜と目を合わせて歌い始めた。
【♪窓にえがお……
あーロマンス列車よ “A ”T R A I N
甘い夜風……
ばら色の夢をのせ♪】
「おっ……
この曲はビリー・ストレイホーンの曲ではないか。」
「そうです。
ビリー・ストレイホーンの曲を美空ひばりがカバーした【A列車で行こう】曲です。」
「あの美空ひばりが、カバーした曲か……
彼女は、知ってるよ。」
若菜と茜の絶妙なハーモニー、そして茜の強弱をつける繊細なピアノ。
そして二人は、歌い終えた。
島崎マネージャーは、あまりの迫力で腰の力が入らない。
ジミー・ブラウンは即答した。
「 Betty good 素晴らしい!もちろん合格だよ。
今日から、ここで思う存分、やってくれ。
君達にはパワーがある。
しかし、まだ足りないのは、唄を思う気持ちがまだま足りない。
おそらく美空ひばりと比べてみたら、きっと分かるはずだ。
それに、ここは本場のジャズの街、ジャズには古い歴史がある。
それを出すのは大変だが、ここで本場のジャズを学んでくれるか?」
「はい!勉強します。」
そして、その日から二人はジャズバー、リバーサイドで一日一回、週五回の出演が決定した。
「たまげたぞ!
凄い迫力だった。
しかし、ジミー・ブラウンって人、本当に解って言ってるの?
俺なんか、鳥肌立ったよ。」
「解ってないのは、お父さんでしょ!」
「茜、マネージャーだよ。」
二人の評判は直ぐに広まり、酒を飲みに来る客よりジャズを楽しむ客層が増えた。
若菜も茜もレパートリーを増やして行き、店は座る場所が無いくらいの盛況ぶりで遠くからも二人を観るために、訪れる客も少なくなかった。
【素晴らしい!何て言う日本人だ!】
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