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華咲舞は、タクシーの中で一年間のスケジュールを渡した。
「こまごまなスケジュールの確認は事務所に一時間おきに連絡しなさい。
そして、寝泊まりは、私の隣の部屋を貸すわ!
食事は、カロリー計算もしてよね!」
「あの……
私、住む場所あるんですけど……
そして、料理の経験が……」
「彼が来た時だけ帰りなさい!
料理は一から勉強でいいわ!」
「は、はい…」
彼がいるんだ…
《若菜は初めて不安と緊張で胸が、張り裂けそうになったそうだ。》
そして、タクシーが着いたのは華咲舞のマンションだった。
二八階建ての高層マンションの最上階。
部屋に着き、ドアを開けた。
何だ……
この部屋は…
あまりにも、汚すぎる……。
超高級な高層マンションの豪華な部屋を期待していた若菜だったが、あまりの散らかっている部屋に唖然とした。
「あのぉ……
昨日まで、他の付き人さんが付いていたんですよね……」
「そうよ!
最初は、片付けてくれてたけど、付き人も疲れたみたい。
他の事は、しっかりやってくれたから、我慢したけど……
あなたは、ちゃんと頼むわよ。」
「はい……」
華咲舞は明日から始まるスター、オリオンの公演があると言うのに、お菓子が散らばったソファで寝転んでポテトチップスを食べながら、昨日に録画されたであろう、お笑い番組を観ている。
「ぎゃははははっ!ウケる〜」
この人、本当に福岡歌劇団のナンバーワンの娘役の華咲舞?
カロリー計算?
すでに、計算出来ないし……
私、この人に憧れて、この世界に入ったのに騙された気分……
若菜はテレビを観ている華咲舞をよそ目に、半日がかりで掃除を終わらせた。
夜、六時から音楽学校に戻り、夜間学校の授業が待っている。
残り時間まで後、一時間、若菜は母から教わったスパゲティを思い出しながら作った。
取り敢えず見た目は普通だ。
若菜は一口、味見をした。
「マズっ……
ケチャップ入れ過ぎで、パスタも茹で過ぎた……」
怒られる覚悟でテレビを観ている華咲舞のソファの前にあるテーブルに差し出した。
華咲舞は、テレビを観ながらスパゲティを口にした。
「結構、美味しいかも!?」
「……。」
華咲舞は、かなりの味覚音痴だった。
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