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八時にタクシーで福岡歌劇座に到着した。
そこには、早くも多くのファンの姿。
「華咲さん、開演まで三時間以上あるのに、もう開演を待って並んでるんですか?」
「そうよ!
ファンは私達の公演を心待ちにしてるの。
だから、絶対、失敗は許されないのよ。
何年、経っても緊張するわ。
逃げ出したい事もしばしば……
あらっ……
何であなたに、そんな事を話したんだろう……
さぁ、行くわよ!
荷物、忘れないでね!」
多くのスタッフ達が華咲舞の到着を待っていた
「おはようございます!」
さすが大スターだ。
到着するなり、衣装室に通され、衣装係やメイク係が行ってくれる。
若菜は、不思議に思いメイクをしている華咲舞にたずねた。
「ここでメイクしてくれるのに、何故、家でも化粧するんですか?」
「当たり前でしょ。
家から出た時から私達は、人に見られてるって事よ!
あなたも日頃から気をつけなさい!
服装も、ちょっとは、お金をかけないとね!」
若菜は、高いプロ意識に戸惑いを感じつつも華咲舞という女性に引き込まれて行った。
そして、メイク室に舞鶴翼に連れて来られるように茜が後ろから付いて来ていた。
若菜は、小さく手を振り茜も小さく、うなずいた。
どうも、茜に話しかける雰囲気では、なかった。
明らかに茜は怯えてる。
「翼、おたくの付き人はどうだ?」
「初日から寝坊。
朝から、私がコーヒーを入れてあげたわ。
でも、初日にしたら、まずまず頑張ってるんじゃない。」
「舞の付き人は?」
「駄目、駄目!
ずっと、怯えてる。
昨日、あの子に試したのよ!
玄関に置いてる私のブーツ、ちょっと斜めにしたのよね。
あの子、全然、気づかないで自分の靴だけ真っ直ぐにしたのよ!
信じられる?」
「あの子の靴は、ひっくり返ってたわよ。
あの子だったら、即刻クビね!
翼は、几帳面過ぎるのよ!」
「びったれから言われたくないわ!」
【福岡弁で、びったれとは?=だらしがない】
「悔しいよ。
他の同期を見ていたら羨ましいよ。
何で私だけ?て思うよ。
あっ、若菜もだったわ……
ごめん。
若菜は、今どうなの?」
「華咲は舞鶴と真反対。
部屋は汚いし、家では気を抜きっぱなし、でも、突然、オフからオンになるのよ。
私達が、花の匂いを嗅ぐようにね。」
「舞鶴も、そうなのよ。
細かい事、言うわりには、発声練習したり、ジムに行ってる時は、服が乱れていたり、汗を飛ばしたり、床を拭こうとしたら怒るのよ。」
「……。」
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