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舞鶴翼は、極度の綺麗好きの几帳面人間だった。
茜も、どちらかと言えば几帳面な方だが、舞鶴翼は度を超えている。
側から見れば、付き人いびりしか見えない。
ただ単に、いびっているだけかも知れない……
だから舞鶴翼の付き人は、誰も一週間も持たないのだ。
「公演リハーサル入ります。」
華咲舞と舞鶴翼は衣装室を後にした。
「島崎!スケジュールの確認と帰りのタクシー予約しなさいよ。
タバコ臭いのとホコリがあったら、私、乗らないからね!」
「は、はい。」
「なんなのよ!あいつ。
茜、悔しくないの?」
「悔しいよ。
他の同期を見ていたら羨ましいよ。
何で私だけ?て思うよ。
あっ、若菜もだったわ……
ごめん。
若菜は、今どうなの?」
「華咲は舞鶴と真反対。
部屋は汚いし、家では気を抜きっぱなし。
でも、突然、オフからオンになるのよ。
私達が、花の匂いを嗅ぐようにね。」
「舞鶴も、そうなのよ。
細かい事、言うわりには、発声練習したり、ジムに行ってる時は、服が乱れていたり、汗を飛ばしたり、床を拭こうとしたら怒るのよ。」
「……。」
そして、スター、オリオンの公演が開演した。
若菜や茜が経験した、歌劇音楽学校の文化祭の規模とは、かけ離れた世界だった。
六〇人のダンサーによる、歌とダンスのショーが始まった。
一列なり、一糸乱れぬ足上げラインダンスだ。
以前、おばあちゃんに連れられて、初めて観た、あの感動が今、また蘇った。
そして、憧れだった人が近くにいる。
自分が思い描いた人とは多少違うが……
そして、男役、舞鶴翼と娘役の華咲舞が華麗な衣装でステージに出てきた。
二人によるデュエットダンスに観客のボルテージは最高潮になった。
若菜と茜も、鋭い視線で二人を観ていた。
二部は、芝居だ。
【風と共に去りぬ】の上演が行われ、主役の二人は場内を熱狂させた。
舞鶴翼は、男らしい情熱とパワーを前面に出し、引き込まれる演技を、華咲舞は女性らしい清楚な動きだが体から溢れる魅力的な演技を披露した。
公演は観客を魅了し、幕を閉じた。
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