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桜が散るより麗しく、星が流れるより早く、花火が音をたてて上がるより頼りなく、愛する人の手を握る力加減より儚い感情が虚空を舞った。
当たり前に、横に、同じ大きさの手のひらがあった。それを繋げば不思議と安心できて、何時しか握られた手に羞恥を覚える。自分は独りでも生きられると強がって。
羞恥心に囲まれた温もりを、懐かしく思う時がある。それは、少年だった僕が青年になるのに相応しい変化だった。
少年の頃、紅く染まった頬を隠すに精一杯だった。
青年の頃、懐かしさが咲き、離したくないと思う。
初恋に青田風が滲み、校舎の端に埃が積もる。
向日葵畑から傾いた案山子が見えた。
また、そっと手を握る。
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