プロローグ

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おもむろに開いたドアから、乗客が吐き出されて いく。チカは名残惜しそうに手を離すと、ホームに片足を下ろし一度振り向いた。 チカが投げた視線の先には雨と泥に汚れた床と、 無人のシートしか無く列の最後尾に混ざると本当の意味で赤の他人に戻れた気がした。 改札を出ると、見計らった様にポツポツと雨が 降り出した。私服姿の大人は不意打ちを食らった様に顔をしかめ屋根の下に戻り、友人同士と 思われる学生は鞄を頭に乗せ顔を見合わせ走り 出した。 雨って、何で傘持ってない時に降るんだろ。 心の中で悪態をついたチカは、誰も見ていない と知っていながらわざとらしく肩をすくめて 見せるのだった。
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