プロローグ

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* また雨?よく飽きないよね、本当。 午前九時。しっとりと雨に濡れた駅のホームは、 乗り降りを大勢の客でひしめき合っている。 これからどうするか、何も考えてなかった…。 こんな雨の中行きたい所なんか無いし、真っ直ぐ 家に帰るのも何か気が引ける。 遠くに行きたい。誰もあたしを知らない土地で 暮らして、一から…ううん、ゼロから人生をやり直したい。   無計画で改札をくぐった事を、チカは今更後悔 した。そんな時だった。 「雨ですね。」 不意打ちをかける様なその声に、チカは振り向かず耳を傾けた。きっと周囲の人間が発する談笑 か空耳が聞こえただけで、自分には関係無いと 思ったのだ。
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