たまごサンド

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「誰…」 見たことのある女性。 確か、ここ毎日来ている常連さん。 優斗さんによく話しかけてくる人で、仕事帰りなのかいつもセンスの良い服を着ていて店てば目立っていた。 「すみません。もう閉店なんです」 奥から優斗さんが出てくる。 女性が突然 「アタシを好きなくせにどうしてその女といるの!」 と騒ぎだした。 優斗さんは困惑顔で私を近くに引き寄せる。 「毎日来てくれる常連さんですよね。いつもありがとうございます。私を好きとは何のことでしょう?」 優斗さんの声にはいつものような穏やかさがない。 「毎日毎日、アタシを見てうっとり笑ってるじゃない!」 「アタシを好きなのにどうしてその女といるの?」 女性はすごい形相で怒鳴り散らす。 「誤解させていたら申し訳ない。きみを好きではない。きみのことはありがたい常連さんだと思っている。」 優斗さんは私の肩に力を入れてぐっと抱き寄せる。 「この人は俺の大事な恋人だ。俺が愛してるのはこの人だけだ。」 そう言いながら私の顔を見る。 「許さなーい!」 女性はバッグからナイフを取り出し、私達めがけてやってくる。 優斗さんは咄嗟に私の前に出て庇う。 ザクっ 「つぅ…」 ナイフを避けようとした優斗さんの右足に刺さった。 「優斗さん…」 私はガタガタ震えながら声にならない声を出す。 「あ、あなた達が悪いのよ」 ナイフが刺さったのを見て怖くなったのか、女性は逃げ去っていった。 泣きながら震えていると 「聡子ちゃん。スマホ取ってもらえる?」 無理して笑おうとしているのがわかる。 震える手でスマホを渡すと、優斗さんは何事もなかったかのように警察や救急車を呼んだ。
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