たまご

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「たまごって、寂しくなくていいよね」  ふいに隣に座っている甥っ子の健太に言われる。 「どういうこと?」  美和は、口についてしまったご飯粒を取ってあげながら言った。 「だって、『きみ』と『しろみ』がいつも一緒でしょ?それに、『から』がふたつをまもってくれているから」  美和はそれを聞いて、「なるほど」と思った。 「確かに、寂しくないね」 「でしょ?僕、うまれかわったらつぎはたまごがいいなぁ」  健太は嬉しそうに、卵焼きを頬張る。 「美和ちゃんは、なにになりたい?」  口をもぐもぐさせながら、きらきらした眼差しで健太が聞く。  美和は少し頭を、悩ませた。  生まれ変わったら、なんて考えたことがなかった。  生まれ変わる。そういう発想がなかっただけ。 「私は、なんでもいいかな」  健太が、なにか言いたそうに口を開いたとき、姉が「健太!もう早く食べちゃって!保育園遅れるでしょ」と、洗面所から顔をのぞかせ声をかける。  姉の朝は忙しい。旦那、つまり美和の義兄と健太のお弁当を作る、のは、母の仕事で、姉は自分の支度にとても忙しい。  実家に戻ってきてからは、毎日がこんなかんじだ。  3人で暮らしていたときは誰が健太の面倒を見ていたのか、と不安になるくらい。 「美和!手空いてるなら、健太の着替え手伝ってあげて」  姉に言葉で勝てない美和は、いつも不満は口に出さない。  ずっと、これからも。  
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