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ため息を小さくついて、横にいる健太を見ると、少し寂しそうに唇を噛んでうつむいていた。
健太と自分は似ている。
似ているからこそ、この朝の時間や、二人で過ごす時間。
美和はすごく好きだった。
姉夫婦が実家に帰ってくることは嫌で仕方がなかったが、健太に毎日会えるのは本当に幸せだった。
こんな可愛くて、愛しい。
天使、というとありきたりだが、やはり天使。
笑顔が一番似合うのだ。
美和は健太の頭を軽く撫でる。
「着替えよっか」
健太は美和を見上げ、嬉しそうに笑う。
「今日ね、かいじゅうの服着る」
「かいじゅう?あぁ、あのお気に入りのやつか」
美和が立ち上がると、キッチンにいた母が「それなら、まだ乾燥機の中かもしれないわ。佐知!佐知!」と姉を呼ぶが返事がない。
「あ、いいよ。私、取りに行く」
美和はそう言い、洗面所の方へ行く。
そこでは、姉が丁寧にコテで髪を巻いていた。
保育園に行くのに、こんなにおしゃれする必要があるのかは、美和にはわからない。
けれど、姉は仕事をしていないはずなのに、保育園に送りに行ったあと、夕方まで帰ってこない日が多い、と母がこぼしていた。
美和は、腰をかがめ、乾燥機を開けて、洗濯物を取り出す。
姉は、邪魔くさそうに鏡越しに美和を見て、おおきくわざとらしくため息をついた。
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