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そのとき、健太が勢いよくトイレから出てきた。
「美和ちゃん!ちゃんと、一人でトイレできたよ!」
美和はかがみ、「すごいね。よくできた」と言い、健太の頭を撫でる。
幸せだ。
だって。
「この子といたら、同じ毎日なんか、ないでしょ?」
姉が、スマホから顔をあげる。
美和は、姉の方へ顔を向ける。
「幸せだと思う。十分」
笑顔を見せる美和に、姉は少し口を開け、嬉しそうに笑う美和と健太をしばらく眺めていた。
「あなたより、美和のほうが大人ね。よっぽど」
母が姉の近くに寄り、「もう帰ってこなくてもいいわよ。健太との時間、作ることが出来ないのなら、あの子を悲しませるだけだから」と、母が姉に耳打ちしているのは、聞こえないことにした。
今まで母が姉に伝えている言葉の中で、聞いたことがないくらい母の声が震えていたからだ。
母親は、子供が間違ったことをしたら、辛い言葉もかけなければいけないかもしれない。
けれど、その分、子供が成長をしたら、誰よりも、一緒に喜んでほしい。
次の日、気まずそうに姉がすっぴんのまま、朝食が並んだテーブルの前に座る。
「おいしいねぇ」
健太が嬉しそうに笑う。
みんなで食べる朝ごはんは、きっと、誰かが、少しづつ成長して、幸せに近づいた証だ。
「おいしいね」と笑いながら朝ごはんを食べることは、きっとなによりのご馳走なのだ。
生まれ変わっても。
あなたの笑顔に、会えたら、なんでもいい。
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