0人が本棚に入れています
本棚に追加
「たまごって、寂しくなくていいよね」
ふいに隣に座っている甥っ子の健太に言われる。
「どういうこと?」
美和は、口についてしまったご飯粒を取ってあげながら言った。
「だって、『きみ』と『しろみ』がいつも一緒でしょ?それに、『から』がふたつをまもってくれているから」
美和はそれを聞いて、「なるほど」と思った。
「確かに、寂しくないね」
「でしょ?僕、うまれかわったらつぎはたまごがいいなぁ」
健太は嬉しそうに、卵焼きを頬張る。
「美和ちゃんは、なにになりたい?」
口をもぐもぐさせながら、きらきらした眼差しで健太が聞く。
美和は少し頭を、悩ませた。
生まれ変わったら、なんて考えたことがなかった。
生まれ変わる。そういう発想がなかっただけ。
「私は、なんでもいいかな」
健太が、なにか言いたそうに口を開いたとき、姉が「健太!もう早く食べちゃって!保育園遅れるでしょ」と、洗面所から顔をのぞかせ声をかける。
姉の朝は忙しい。旦那、つまり美和の義兄と健太のお弁当を作る、のは、母の仕事で、姉は自分の支度にとても忙しい。
実家に戻ってきてからは、毎日がこんなかんじだ。
3人で暮らしていたときは誰が健太の面倒を見ていたのか、と不安になるくらい。
「美和!手空いてるなら、健太の着替え手伝ってあげて」
姉に言葉で勝てない美和は、いつも不満は口に出さない。
ずっと、これからも。
最初のコメントを投稿しよう!